指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

そして僕は途方に暮れる。

昨日髪を切って来た。入れ忘れていたものをスーツケースにしまって鍵をかけた。フランクフルトの気温を調べた。機内のことも考えパーカを腰に巻き付けて行くところまでは決まったが、アウターをスイングトップにするかスタジャンにするかでまだ迷っている。仕事とは言ってもチノパンでいいしネクタイも一応持っては行くがしなくてもいいということなので、ブレザーの上に羽織るのにはスイングトップでもスタジャンでも可だと思われる。いずれにしてもVANのバックプリント付きなので、フランクフルトのブックメッセで見かけたら声はかけないまでもあのeheという人かなくらいにお思いになって間違いない。そんなの着てるの僕だけだと思うから。
東京発10:03の成田エクスプレスに乗るまでにまだ大きな仕事がひとつ残っている。今度の出張のことを子供に話すことだ。出産直後を除けばこれまで子供と離れていた期間は最長で二週間だがそれは家人と子供が帰省していたときの話で、ふたりが自宅にいて僕がいなかった期間の最長は国内に出張したときで一泊二日だ。何回かあるがその度期間内かその前後に子供が喘息の発作を起こしたことは以前書いた通りだ。それが今回は丸一週間不在なので僕としてはかなり不安なのだが、こちらが不安がると子供にも伝わるので何とか明るく言って聞かせなければならない。一応言い方は考えてあるけどうまく行くか心許ない。下手をすれば今夜から何らかの症状が子供に現れるかも知れない。ひとつ残らず君を悲しませないものを君の世界のすべてにすればいい。そして僕は途方に暮れる。