指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

やりたい仕事、やりたくない仕事。

 塾を始めてからやったバイトは三つで、ひとつは大学の清掃、もうひとつはカテキョ、最後がスーパーの品出しだった。前にも書いたと思うけど清掃の仕事は本当に大変だった。拘束時間が長くて朝七時から午前中いっぱい働いてお昼の休憩一時間を挟んで午後になってやっと終わるともう塾の開始まで三十分しか残っていない。自転車を飛ばして大急ぎで帰った。合わせて毎日十二時間くらい働いてそれが週六日。生活のために必死だったとは言え今から考えてもよくやってたもんだなという気がする。カテキョは楽だったけど移動時間が長くて結局は効率が悪かった。担当の子が卒業したのでお払い箱になったきり仲介の会社は次の生徒さんを紹介してくれなかった。今後も紹介してくれないだろう。それに万が一紹介してもらったとしてもよほど近くに住む子でもない限りもうやらない。スーパーの品出しは人間関係がよくなかった。別に自慢する訳じゃないけど僕はその気になればかなり感じよくなることができてそういう風に人から評価されることも珍しくないんだけどここではスタッフの何人かからはっきり目の敵にされた。店長とかとは仲良かったんだけどそういうせいもあったのかなあ。ここまで他人とうまく行かないというのは初めてだったかも知れない。それで塾の収入だけで暮らせる見通しが立った瞬間に辞めようと思った。ただそれとは別に体を動かすバイトをしてるときいつも思ってたことがあってそれは自分の能力(たとえわずかなものであったとしても)を生かした仕事がしたいということだった。たとえば文章を書くとかPC関連とかウェブ関連とか誰かに何かを教えるとか。もちろん職業に貴賎は無いと思うけど向き不向きというものはある。
 歩いてうちから一、二分のところのある施設に清掃の募集を見つけて今週面接を受けて今日採用になったとメールが来た。このまま行けばそこで十月からまた清掃のバイトが始まる。んだけどもうひとつPC関連のインストラクターの仕事にも応募していて本当はこっちの方がとてもやりたい。もともと人にものを教えるのは好きだしせっかくPCにも少しは詳しいしPCを使った仕事も嫌いではない。時給だってこっちの方がいい。拘束時間が長くて塾の開始に間に合わないんだけどそこは家人に何十分か任せることでなんとかなりそうだし拘束時間が長くてもやりたい仕事ならそうきついとは感じないような気がする。内緒だけどその他にもこの仕事にはやりたい要素があって面接まで進めるといいなあと思いながらここ数日を過ごすことになる。