歯がうまく磨けてるかずっと不安だった。小学校の頃サフラニンテストという歯を赤く染める検査があって赤くなるほど磨き残しが多いという話で僕は他の子と比べても赤が濃く広範囲なような気がした。それで学校で何か言われたのかうちに帰って親に何か言われたのか詳しくは覚えてないんだけど自分は歯がうまく磨けてないというのがトラウマのように心のどこかに残った。特に虫歯が多い訳じゃなかったし昨日も書いたように三十年近く歯医者の世話にならなかったんだから結果的にはそんな心配をする必要はなかったことになる。でも今でも自分は歯がうまく磨けてなくて口の中が不潔だという思い込みが抜きがたくある。それが小学校以来続いてるのだとしたら我ながらちょっとかわいそうな気がする。自分を哀れむなと「ノルウェイの森」の永沢さんは言うけど。
昨日行った歯医者の先生が気さくでよく話す人だったので途中で自分は歯がちゃんと磨けてるかと尋ねてみた。磨き方に癖はあるけれどと彼女(女医さんだったので)は言った。歯の表面はよく磨けています。それを聞いて長年の憑き物が落ちた気がした。自分なりには磨き残しがないように隈なく丁寧にブラッシングしてるつもりだったので。これで自分の口中は不潔だというイメージがきれいに払拭されるといいんだけど。でももしかしたらあのサフラニンテストでトラウマを負ったからこそ僕の歯は比較的健康を保てたのかも知れない。そう考えると心に傷をつけることにも実際的な効用があるということになる。もちろん心に傷をつけることが何かの役に立つなんて金輪際考えたくもないけど。