指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

アニメの話2。

 家人が録画しておいてくれたいつの放送かわからない「風の谷のナウシカ」を観た。この作品を劇場で観たのは1984年の春のことだ。当時僕には好きな女の子がいて彼女もアニメのファンでその春大学に合格してやっと自由の身になれたのでちょっと遠方だったんだけど会いに行って一緒に観た。ふたりとも二十歳だった。彼女に会うのはそれが初めてだった。映画を観た後彼女の実家に招待されてふたりで時を過ごした。こうやって書くとなんだか不思議な話だ。その結果彼女への思いが高じて後に派手にふられてえらい目にあうことになる。いい思い出とはとても言えない。今でも思い出すと胸が苦しくなる。
 それはさておき前に一度書いた通りこの作品がすごく好きだ。後年の宮崎駿さんの作品に見られるバランスの悪さがまだ全然見られない。ストーリーテリングという点から見たら傑作の誉れ高い「ルパン三世 カリオストロの城」に勝るとも劣らない質だと思う。音楽もすばらしい。作画はナウシカに関しては場面場面でばらつきがある気がするけどそういうことを言い始めるとセルアニメなんて観られない。許容範囲ということにするしかない。もう百回くらいは観てると思うけど観る度に引き込まれる。
 その翌日と言うのは昨日のこと機動戦士ガンダムの新シリーズが始まるということで子供が見始めたので一緒に観た。「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。ガンダムTVシリーズを本放送で観るなんて「機動戦士ガンダムダブルオー」以来だ。相変わらずストーリーはよくわからない。でもとりあえず楽しく観た。ガンダムTVシリーズを一話で理解しろというのはそもそも無理なんじゃないかと思う。その番組のCMで「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の4Kリマスター版が公開されるということを知った。実はこの作品もものすごく好きだ。大学の友だちがVHS版のビデオを持っていて酔っ払っては彼の下宿に行ってよく観た。そのCMを見たら急にどうしても作品を観たくなってDVDをアマゾンで探した。すると千五百円弱で売られていることがわかった。安い。今度出る4kリマスター版は一万五千円だそうなんだけど別にリマスターである必要はない。昔観たのと同じ奴で充分なので注文した。レビューも好意的なものばかりだった。劇場の大画面で観たら感動もひとしおかも知れない。観に行こうかな。ちなみに音楽監督坂本龍一さんという豪華さ。サントラも持っていて最近ではあんまりだけど以前はよく聴いた。
 その夜はTVKで午後10時からあだち充さん原作の「タッチ」とその後10時半から「銀河鉄道999」のそれぞれTVシリーズが放映されどちらも毎週観てるので観た。「タッチ」は原作と比べて南の作画が圧倒的にひどい。もう少しもかわいくない。観たことないけどこれは「みゆき」なんかもそうなんだろうか。原作はどちらも何度繰り返し読んだかわからないほどだけどアニメは観たことなかったので今は観ることは観てるけど不満たらたらだ。かっちゃんが亡くなってたっちゃんが野球部に入ったあたりのところに差しかかっている。この後監督が交代してすごいやな展開になるんだと思う。「銀河鉄道999」は昨日が最終話だった。本放送は質の低さに嫌気が差してかなり前から観てなかったと思う。今回は懐かしさも手伝って我慢して観た。こちらもメーテルの作画が一貫してひどい。宮崎駿さんが監督だったらほぼ全回に駄目出しをしたことだろう。オープニングやエンディングでもひどいのでストーリー部分のひどさは推して知るべしというところかも知れない。曲もよくない。つまり何ひとつ取り柄がない。原作にあれほどはまってなければ観なかったことだろう。原作の最終話がどんなだったか忘れちゃったので比べようがないけどTVシリーズの最終話も特に感心したものじゃなかった。後番組は高橋留美子さん原作の「らんま1/2」ということでたぶん観ない。
 こう考えてくると手間もお金もある程度かけられる長編映画の質は高くTVシリーズの質は低いと言ってるように聞こえる。でももちろんひどい映画もあればすばらしいTVシリーズもある。もっといろんな作品を観たいけど時間も限られてるのですばらしいものだけ観たいという気持ちもある。その一方でひどくても懐かしいものはこれからも観るんじゃないかという気もする。