- 作者: 吉本隆明,芹沢俊介
- 出版社/メーカー: 彩流社
- 発売日: 2005/06
- メディア: 単行本
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乳離れして一ヶ月ほどの間、子供は明らかに変だった。始終不機嫌で、ちょっとしたことで爆発的に怒った。怒ると家人や僕にはまったく手がつけられなかった。とにかく一刻も早くこの子が目の前からいなくなって欲しい、と心から願わずにはいられないほどの大騒ぎだ。僕らはその怒りを、生活の中に授乳がなくなったことによるストレスだと解釈した。不安なときや気が立ったとき授乳で落ち着いたことが、これまでにも数え切れないほどあったからだ。
でもその時期を過ぎると、子供は大変聞き分けがよくなった。機嫌を悪くするときもあるが、こちらが相応の対処をしてやれば、自分で機嫌を直せるようになった。
現在母子手帳を見ると、13ヶ月内外で離乳することが奨められているそうだ。育児雑誌や通信教育の教材などを見ても、このことの是非はあまり問題にされていないように思われる。そして実に40ヶ月にわたって授乳を続けた我が家に、授乳中も、それが終わった今も、プレッシャーをかけ続けている。
もしも、同じようなプレッシャーを感じているお父さん、お母さんがいらっしゃったら、と思ってこの本を取り上げている。最初の50ページを読んだだけで、ものすごく気が楽になる。13ヶ月離乳を奨める根拠となった欧米型の子育て法が、ほとんど根こそぎに疑われているからだ。これから育児に入られる方も、読んでおいて損はないと思う。
おまけに吉本隆明さんが、ご自分の「軒遊び」を振り返っている序文が、何とも言えず美しい。こんな「軒遊び」の時期は、僕の世代くらいまでは確かにあった。0才児から預かってくれる保育園ができ、幼稚園も3年保育がほとんど当たり前になった今でも、「軒遊び」をのんびり楽しめる豊かな幼年期はあり得るのだろうか。