指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

何を読み返したらいいか。

夏目漱石を読む 吉本隆明著 「夏目漱石を読む」
何を読み返したらいいか考えた。それで吉本さんの講演を一度だけ聴きに行ったことがあるのを思いだした。紀伊國屋ホール漱石についての講演だった。「門」が取り上げられていたのをよく憶えている。もう十年近く前にこの本が出たとき、読んでる途中で「門」が出て来てどうもこの話は聴いたことがあると思って注記を見たら紀伊國屋ホールでの講演を元に起こされ手を入れられたものとわかった。だから僕が吉本さんの講演を聴きに行ったのは1993年2月7日だったと思われる。十九年前で半年後には三十歳になろうとしていた。
講演録にも収録されている通り、「門」の主人公夫婦の坂井という家主を吉本さんは長く坂井老人と呼び習わしていたが、設定では四十がらみとなっていてそれを指摘されて驚いたというくだりがあった。この日の講演は三時間以上続いたはずだが、一度だけ休憩がありその休憩が明けたところで吉本さんはこの逸話から話を続けられた憶えがある。聴衆は当然客席に座ってる訳だが吉本さんは演台の向こうにずっと立っていらっしゃりそのお元気な姿に驚かされた。
そんな縁もありまずこの漱石論を読み返すことにした。あと何を読み返せばいいんだろう。昨日泣いていたら家人が好きなだけ泣いたらいいと言ってくれた。