指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

今年も大体終わった気がする。

師走は仕事が忙しいと昨日書いたばかりなんだけどどうやら大体終わったらしい。大体終わったと思える日は毎年のことながら突然やって来る。あれもやらなきゃこれもやらなきゃと思っているうち向こう側から次々と新しい課題がやって来る。それらを古い順に片づけて行く。するとある時点からやって来る新しい課題の数が減り始める。それから何日かすると唐突にすべての課題が片づいている。何もかもがきれいさっぱり。そうして自分の机に戻り本当にすべて片づいたかどうか点検してみる。整頓している暇のなかった机の上はファクスやメモやひっくり返した灰皿やその中身でひどい有様になっている。それらをファイルしたり捨てたりしながらやり残した仕事がないか考える。何もない。とりあえず今日の仕事は終わったし明日緊急にやらなければならない仕事もない。明日緊急にやらなければならない仕事があるならこれからすぐに取りかかるだけの話なのだが、それがないのだからつまりは何もすることがないのだ。この瞬間の気分がとても好きだ。自分を追いかけて来るものは何もない。立ち止まっていても構わない。
でもそれは向こう側からやって来る仕事に関してのみの話だ。こちら側から打って出る仕事についてはもちろんやるべきことはある。たとえば来年の企画を考えたり、すでに終わった仕事について検討し次につなげたりする作業だ。でも少なくともそれらは今日明日という期限のついた仕事ではない。秋が来てからずっと期限付きの仕事に追われてきた目から見れば、束の間ではあるけど空白の時間に足を踏み入れたことになる。この秋は誰の機嫌を損ねることもなく、勘違いでなければ少しは感謝もされつつ仕事をすることができた。何よりのことだと思う。