指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

東京駅へ出迎え。

昨日家人と子供が帰省先から新幹線で帰って来るのを東京駅まで迎えに行った。ホームに立ち向こうからふたりの乗る新幹線が来るのを待った。何本かの新幹線が到着し、何本かが出て行った。日が暮れかかっていた。
家人とは遠距離恋愛だったので何度も東京駅で彼女の乗った新幹線を待った。また逆に見送りにも行った。だから新幹線のホームには今でも個人的な情緒がたっぷりと立ちこめている。でもあの場所に個人的な思い入れがある人の数というのは結構多いのではないかという気がする。それにしても遠距離恋愛って結構こわい。自分で言うのも何だけど、あれはすごい情念だと思う。その後うまく行ったとしても何か独特なものが残ってしまう。たとえば新幹線のホームなどに。
子供のたっての希望で選ばれたN700系のぞみが定刻通り線路の向こうに現れる。それは他のどんな新幹線とも違う、自分にとって大切な人を乗せた特別な乗り物だ。それは見る見る大きくなって行き、遠くからは円盤形に見えるフォルムが目の前まで来てなめらかな流線型に変わる。それはホームを走り抜けそうに速いが、徐々に減速しやがてゆっくりと停車する。車窓からのぞき込む。かつては一人きりだったが今ではふたりになった大切な人の姿は、いつもすぐに見つかる。目がいいのだ。