指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

外回りデート。

出産の一ヶ月余り前から実家に戻った家人とふたりきりで二度ほど昼食をとったのは、出産のときに駆けつけた僕が家人の実家に何日か泊めてもらっているときのことだった。生まれたばかりの子供を実家に預けて、一度は近くのモスバーガーを食べに行き、一度はちょっと離れたショッピングモールへ行った。それきり、家人とふたりで外食する機会は無くなった。うちは幼稚園に入るまではどんな施設にも子供を預けたことがなく、つまり家人か僕かその両方かが必ず子供に付き添っていたのでふたりきりで食事をするということができなかった。子供が幼稚園に入ってから、週日僕が休みをとってふたりで池袋で食事をしたときは、だからその晴れ晴れとした自由な感じが信じられないほどで本当にうれしかった。それまで五年以上にわたって必ず気づかっていなければならなかった子供を、まったく気にせずにふたりで食事ができるのだ。家人とふたりで出かけるのが好きなのは、このときのことを追体験しているところが今でも幾分かあるせいだと思われる。
休みをとらないまでもふたりで外食できるのが、僕の外回りに家人が着いて来る場合だ。毎週ではないけれどたまに行く得意先に亀有のアリオやラゾーナ川崎があり、子供が小学校に行っている午前中にそこへ行くときはよく家人が一緒に来て僕が仕事を終えた後お茶を飲んだり昼食を食べたりする。あるいはふたりで買い物をしたりする。実は今日も亀有に行ってふたりでお茶を飲み昼食を食べた。誰にも内緒の、ふたりだけの時間だ。ふたりにとって本当に貴重な時間だ。