指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

雨のブックメッセ。

朝からぱらぱらと降り出した雨はその後本降りになった。こちらの人は少しの雨なら意に介さない。
フランクフルトのブックメッセの中で、一瞬懐かしい雨の日の家の中の匂いをかいだ気がした。母親がドアを開けてくれて家に入った瞬間に感じる、いつもの家の中の匂いとは違う雨の日独特の匂いだ。それは本当に久しぶりにかぐ匂いで、しばしどこかへ連れて行かれてしまうのに充分な力があった。フランクフルトがこれまでになく身近に感じられたが、同時にそれが何らかのミスリードにつながることへの警戒も生まれた。心地よいものは、怪しさを必ず含んでいる。そんな気がした。