指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

大風量。

九時前に起きて顔を洗って、昨日やり残した仕事があったので家人より五分だけ早く家を出て会社でそれを済ませ、会社のあるビルの前で家人と落ち合った。駅前で軽い朝食を食べてから池袋に出て家人の買い物を済ませた後は昼食まで特にやることがない。細かい雨の中をゆっくり歩いて東急ハンズまで行き、ドラクエのフィギュアとかを興味深く眺めたけど結局何も買わずにハンズを出た。西武まで戻ってリブロへ行くと新井千裕さんの新刊が積んであった。奥付を見ると三月に出版されたものらしい。週に何回かは書店に行くし、行けば新刊はチェックしているつもりなんだけど今日まで気づかなかった。思いがけない新刊を見つけたときの背中がぞくぞくする感じを楽しみながら手に取り、海外文学の棚にあった「バベルの図書館」の持っていない一冊と一緒に買った。家人は家人で得物があったらしい。よかった。それだけ済ませても昼食にはまだ随分時間があった。
思いついてロフトへ行き前々から欲しいと思っていた扇子を見た。シンプルなデザインの紺の布が張られたのを買った。商品名が「大風量」といってそこが決め手になった。僕は汗っかきでできればたくさん風を起こせるのが欲しかったからだ。試しに扇いでみると本当に大風量だった。
今日は天ぷらを食べようと決めていて、西武のレストランへ行ったが若干高い気がしたので、あまり行かない東武まで行った。そこで揚げたての天ぷらを食べてビールを飲んだ。すごくおいしかった。もう何がどうなってもどうでもいいという気がした。
その気分は帰宅してからも続き、とりあえず子供が下校して来るまで昼寝をした。それからやっとそう言えば、という感じで本を開いた。すると本もとてもおもしろくて夢中になって読んだ。
画然と分けられたふたつの世界を行き来してそのどちらもがすばらしい一日だった。一方が大風量と天ぷら、もう一方は村上さんの新刊。