指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

知り合いに出くわす。

今日の今日教材が必要になったのに買いに行く暇が無かったので、急遽バイトを一時間半早く上がらせてもらってバイト先の最寄りの駅まで歩いた。それは元いた業界に属する会社の真ん前を通るので滅多に使わない道なんだけど案の定と言うべきかその会社の知り合いに出くわすことになった。僕より少し若くて独身で業界の集まりの後何度か飲みに行ったこともある女性で特に苦手な相手ではないけど会わないなら会わないに越したことはなかった。でもまあ目が合ったのに今更隠れる訳にも行かない。満面の笑みで何をやってるのかと問うので近くでバイトをしている、夜は塾をやっていて急に教材が必要になったのでバイトを早引きして買いに行くところだとそのままを答えた。会社の皆さんはお元気ですかと尋ねると元気だと答える。それでもう話すことは無くなった。じゃあ皆さんにもよろしくお伝え下さいと言って別れた。僕がバイトなんかやりつつ塾を続けているという情報が業界中に流れるところが想像された。でも考えてみればそんなの月の裏側の出来事に等しかった。