指栞(ゆびしおり)

すまじきものは宮仕え。

クルーネックセーターを買う。

 初めてクルーネックセーターを買ったのは二十代の初めでニューヨーカーのちょうど紅葉したイチョウの葉のような色合いのものだった。これは大変気に入ってヒジのところがすり切れるまで着ていた。それを着ているときの写真がたまたま残っているんだけどチャーコールグレーのフラノのズボンをはき青いボタンダウンシャツの上にそのセーターを着ている。でもその後クルーネックセーターを買った記憶が無い。どうしてかはわからない。一時期は毎年のようにセーターを新調していたけどその都度チルデンセーターとかケーブル編みとか前とは異なるセーターばかり買ってた気がする。そして何年か前からはセーターそのものを一切身につけなくなった。気候が冬でもそこそこ暖かいことと静電気が気になることが理由なんじゃないかと思う。それがこの前無印良品でクルーネックセーターを見つけてすごく安かったので買って来た。色は濃いめのえんじで何枚か持ってるお気に入りのネイビーのギンガムチェックボタンダウンに合いそうだった。家に帰ってすぐに着てみるとシャツ越しに懐かしいその柔らかな風合いが伝わって来た。それは思いがけないほどリアルに感じられ、ああ、本当に久しぶりの感触だなとしみじみ思った。自分では色とかデザインとかに比べて着心地というのにはあまりこだわりを持たないつもりで来たけどクルーネックセーターにはクルーネックセーターにしかない独特の着心地があった。たぶん他のアイテムにもそのアイテム独自の着心地というのがあるんだろう。今さらながらだけど気づけてよかったと思う。これからはそんなことにも関心を向けて暮らして行きたい。