指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

感動する。

 注文してたリリパット・レーンが届く。すごい巨大な箱でびびった。でも中身はほとんどが緩衝材で商品は高さが15センチほど。それでも思ってたよりずっと大きいし重い。そして精巧だ。つらつら眺めてるうちその仕事の丁寧さ精緻さに思わず感動がやって来た。いつまでも飽かずに眺めてられる。あちこちに細かい欠けがあるし細部にはほこりが積もっているけどそれらも味わいの一部をなしている。1980年代初めの作品ということでどんな人が始めにこれを手に入れそれからどんな歴史を辿って(と言うほど長い年月でもないのかも知れないけど)僕にまで届いたのかそういうのをあれこれ想像するのも楽しい。漱石の「坊ちゃん」に出てくる骨董が趣味の大家みたいな困ったじいさんになってしまった気もする。でもまああのじいさんみたいに人に買え買えと勧めようとは思ってない。ひとりで静かに楽しむ。でも精巧に作られたものってそれだけで人に感動を与えるもんなんだってすごく久しぶりに思った気がする。それは正確に言えば芸術が与える感動とはまた違うのかも知れないけど少なくとも人の力が実現することのできるすばらしい達成のひとつだと思う。
 話は変わってバイト仲間のひろたんのこと。家人と話すうちに彼女とうちの子はどうやら同じ幼稚園の彼女の方が一年上じゃないかということがわかってきた。それで彼女にラインして幼稚園の名前を出してたぶんうちの子が一年下で僕は結構頻繁に朝幼稚園に送って行ったので(頻繁と言うかほぼ毎日だ)幼き日のあなたをお見かけしてたはずだと伝えると幼稚園も学年もその通りなのでたぶん僕にもどこかで会ってたと思うと返って来た。だからどうしたって話なんだけどやっぱりちょっと奇遇な気がする。ポール・オースターの「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」に投稿するほど派手じゃないにしてもね。でも当時の彼女を見かけてたとしてもこんなに美しくて聡明で心の優しい女性に成長することも何より僕より背が高くなることもまったく思いつきもしなかったと思う。僕より背の高い女性の知り合いって日本人では彼女が初めてだから。
 今日は完全休業で午前中は家人の希望に沿って池袋で買い物。ドラクエとのコラボ商品をグラニフで扱い始めたということで見に行こうとしたらグラニフの入るパルコはオープンが午前11時で(そうだったんだっけ?)一時間近くあったので他で暇をつぶす。用もないのにISPの3コインズやブルー・ブルーエを見てカルディーを見てヤマダ電機の地下の薬局で痛み止めのストックを買ってそこから西武百貨店までわざわざとって返してギャラリーの古本市を見て無印良品で買い物して三省堂で新刊だけざっと見て時間になったのでパルコに戻ってグラニフへ。ドラクエ・コラボは思ってたほどかわいくなかった。それよか「11ぴきのねこ」コラボのワンピですごいかわいいのがあって家人と盛り上がる。買ったらと言うとでもあたしもう五十だからと言うのでオレなんかもう六十なのに「11ぴきのねこ」のTシャツ着てるけどと返すとあなたはもうシャレになるからいいのよということだった。シャレとオシャレでは一字違いでだいぶ違う。大体別にシャレで着てる訳じゃなくてこの作品の五歳の時からのファンなので親しみと誇りを持って着てるんだけど言ってもしょうがないので黙る。ちなみにパルコの文房具店のSmithや他にもいくつかショップがなくなってたのにはびっくりした。おそらく二十年以上はあったよねえ。それから山手線に乗って最寄りの駅まで戻る。夕飯の仕度とアルコール類といつものテイクアウトのカレーを買って帰宅。昼寝しようと思ったら朝がいつもより遅かったせいか眠れなかった。それで中森明菜さんを聴きながらこれを書き始める。ホークス今日はどうしたかな。そろそろ居間に戻ろう。