指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

祈る。信じる。

 この前ちょっと触れたクリニックをやってる友人から少し前にメールが来てガンをわずらって手術を受けたということだった。初期のガンではないらしい。今のいちばんの目標は仕事に復帰することだとある。その気持ちはすごくよくわかる。僕たちの日常は大きく仕事に支えられている。だから裏を返せば仕事に復帰することができればそれがそのまま日常を取り戻すということを意味する。日常を取り戻すということはとりもなおさず最悪の命の危機からは逃れたということだ。それが彼のいちばんの目標なのだ。同じ立場に立たされたら(という想像を軽々しくしていいかどうかはさておいて)僕も同じことを願うだろう。彼は元々あったクリニックが街の再開発で移転を余儀なくされ最近別の場所で再スタートを切ったばかりだった。自分のキャリアはあと十年くらいだろうから(僕と同い年なので十年経てば七十歳になる。)新天地でその十年を過ごしたいというような意味のことがブログに書いてあった。それもよくわかる。僕も自分のキャリアはあと十年くらいだろうと考えている。七十歳というのはそれくらいのインパクトを持っている。もちろん実際に七十歳になったらまだまだ行けると思うかも知れないしだったとしたら彼にとっても僕にとってもそれは僥倖と呼ぶべき事態なのだが。今とりあえず僕にできることは仕事に復帰するという彼のいちばんの目標が無事成就することを祈り信じることだけだ。そしていつかまた彼の大好きな辛い辛い中華料理を一緒に食べに行こう。僕はその日が来るのを楽しみにしている。