指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

「赤毛のアン アニメコンサート」に行く。

 「赤毛のアン アニメコンサート」の夜の回に行って来た。結果としては期待はずれだったかな。まず生のオーケストラの圧倒的な音質もしくは音量を期待してたのにそれほどでもなかった。前にも書いた通り1981年にこのアニメシリーズが再放送されたときに全話をカセットテープに録音しそのときは高三の受験生だったんだけどその後二浪が終わるまで二年半にわたって勉強しながらみっちり聴き込んだのでおそらく僕ほどそのBGMやセリフに対して深い記憶を持ってる人はそうはいないんじゃないかと思う。その立場から言わせてもらうと今回のオーケストラはよく言えば再現性が高すぎ悪く言うとオリジナルの焼き直しにしか聞こえず聴いててあまり豊かな体験とは感じられなかった。オリジナルを多少逸脱してでも新たな解釈とか編曲とかあればよかった。もっともそういうことをすると僕みたいなヤツが出てきてなんでオリジナル通りにやらないんだとかいちゃもんをつけられるのかも知れないけど。それから動画。大スクリーンに映し出されるのはいいとして場面がオーケストラの奏でる曲とは必ずしもリンクしてない場合もあって興を削いだ。ストーリーとしては駆け足過ぎて観客がゆっくり浸る暇がないし意味不明な静止画も多かった。マシュウのセリフはほんの少しだけマリラに至ってはセリフはまったくなしという無理も裏目に出たしその結果ナレーションレベルが多すぎて情緒の深さという面ではマイナスに作用した。ナレーションが羽佐間道夫さんでなかったのも致命的だ。まあそれは望みすぎかも知れないけど。救いはアン役の山田栄子さんと主題歌や挿入歌を歌われた大和田りつこさんのトークショーで山田さんは最初から緊張のあまりなのか感極まってなのか言葉がスムーズに出て来ないのがダイレクトに伝わって来て好感を禁じ得なかった。アンのオーディションのお話とかアン役に宮崎駿さんは島本須美さん(「カリ城」のクラリスとかナウシカとか)を推してたのに監督の高畑勲さんがもっと変な声の持ち主がいいと言って山田さんに決まったお話とか高畑監督から一度だけ駄目出しされたお話とかおもしろかった。大和田りつこさんは全部で三種類のそれぞれにあでやかなドレスで登場なさりながらエンディングテーマ「さめない夢」やタイトルはわからないけど挿入歌の「あしたは~どんな日~誰がわたしを呼んでいるかしら~」と「覚えていて~ダイアナ~」と「赤い髪の女の子~探し~に~お出~で~」を歌われて最後にオープニングテーマの「聞こえるかしら」を歌われた。「聞こえるかしら」はほんとに独特な曲だ。まずフルオーケストラなのにサックスが重要な役目を果たしている。クラシックとジャズの融合みたいな。間奏の間(ま)の取り方もとても独特だ。今聴いてもとても新鮮だよなあ。としばし感じ入る。ということですいません行かなくてもよかったという感想になりますかね。休憩時間に飲んだグラスワインの赤はおいしかった。