指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

それから。

 ひと晩中寒けと熱っぽさがゆるやかな周期で繰り返される。最後の寒けが去った午前六時過ぎ熱は八度五分だった。電気敷き毛布の電源を切りトレーニングパンツをひざまでたくし上げる。時折咳が出るのと熱っぽさが取れないのを除けばそう悪い気分でもない。いずれにせよ家人が強く勧めるので今日は病院に行くつもりだ。
 今七時三十分。体温は七度八分。バイトがない日でよかった。
 八時半。子供がいる部屋には入らないようにして家人とふたり台所で立ったまま朝食をとる。ハムとチーズを入れて軽く焼いたカスクート。おなかは空くので難なく食べられた。
 午前九時過ぎ。体温は六度九分まで下がる。九時からかかりつけの医者の予約ができるので電話する。症状を話していくつかの質問に答えたところ十一時半なら予約が入れられるということだったので了承して電話を切る。朝イチで電話して十一時半かよとちょっと驚く。インフルエンザでなくしかも熱が七度を下回っていれば授業はやろうかなと考えている。そう言えば最近かかりつけの病院を替えた。理由はその前までのかかりつけがなんの予告もなく閉院してしまったからだ。この病院はいつも空いていて予約なんてしたことなかったし熱があってつらいときなんかでもすぐに診断がついてすごく助かってた。ただ確かに医師の衰えみたいなものは覗われた。足腰も厳しそうだったしなんか話が長い割には発音が不明瞭で聞き取りづらくなっていた。そしてある日行ったら看板も何もなくなってた。うちの近くではあるんだけど何かのついでに通る道ではなかったのでしばらく気づかなかったんだと思う。ああいう気楽に行ける町医者というのがなくなってしまうのはとても寂しい。時代の流れなのかも知れないけど。
 午後二時前。検査したらインフルAということだった。処方箋を書いてもらい近くの薬局で薬をもらう。今の薬局は混んでるねえ。三十分近くかかったかな。その間に家賃の支払いを済ませこの前借りようと思って子供の奨学金の口座から下ろしたお金をそっくり預金に返す。これで随分さっぱりした。帰宅してから体温を測ったら六度八分だったのでままよと思って一杯飲む。処方された薬イナビルを二包食後に吸い込んだところ。授業はお休みの旨すでに連絡済み。後は寝たり起きたり。
 夕方に結局また九度三分まで熱が上がる。イナビルなんて全然効かねえじゃん。それでまた凍ったペットボトルを出してもらって脇の下に挟むも熱はなかなか下がらない。脇の下に氷を挟んでるんだから検温はできないんだけど数値を見なくても熱が下がった感じがしない。七時半までそうしていて諦めてペットボトルはフリーザーに戻し夕飯にしてもらう。夜はあまり食欲がない。食べてから昨日と同じようにざぶんと入浴して体を拭いてから熱を測ると八度一分。全然下がらない。寝室に引き取ってこれの続きを書き始めた。今八時四十五分。お風呂に入ってだいぶさっぱりしたけど今の体温は八度六分。また九度を超えてくるつもりなのかも知れない。そしたらまたペットボトルで冷やす。