指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

初(悪)夢。

確か1月2日の夜に見る夢を初夢と言ったのだと思う。それに従えば今年の初夢は怖い夢の二本立てだった。初めの夢の内容は憶えていないが、目が覚めたのは午前二時前のことだった。それから数十分うとうとしてまた怖い夢を見て起きた。それが午前四時前だ。高架橋から列車が脱線して落ちてくるところを地面から見上げている、そんな夢だった。
子供の頃から結構たくさんの夢を憶えていられる質だった。幼稚園の頃には楽しい夢を見ると目覚めたときがっかりするが、怖い夢は起きたときほっとする、という逆説みたいな実感とすっかり馴染みになっていた。頻繁に怖い夢を見ていた憶えがあり、後年両親からごく幼い頃のある事件について教えられたとき、それがあの怖い夢の大本だったのかと納得した。もっとも家人はそういうのは考えすぎだと言う。自分なりには筋の通った解釈だと思っているが、正確にはわからない。
昨年は秋口に入って毎晩のように怖い夢を見た。それが一週間ほど続いたときには、ちょっと本腰を入れて何とかしなければいけないのかも知れないと思った。そうやって手をこまねいている内に、怖い夢週間はいつの間にか終わった。
怖いと言うほどではないがいやな夢には繰り返し見るものがあって、体育の授業があるのに体育着がない、というのと、海外に行くのにパスポートが失効しているというものだ。前者の夢の中で自分がどういう位置づけになっているかはよくわからない。別に中学生や高校生の頃の自分に戻っている訳ではない。おそらく今のままの自分とほとんど同じなのだが、なぜか体育の授業があり、体育着がないのだ。後者は実際に今パスポートが失効していることが気にかかっているのだと思う。
怖い夢を見るにはきっとある程度の条件が揃う必要があるに違いない。精神的な事から内臓の方から来る不快感までいろいろな要素が考えられる。でも怖い夢を見る体質というのは、どうも予め決まっているような気がしてならない。夢としては結構ポピュラーだと思う空を飛ぶ夢は想像しただけで気持ちよさそうだが、憶えている限り一度しか見たことがない。おまけにその一度ですら怖い夢だった。