指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

花粉症は治るか。

初めて花粉症になったのは小学四年生のときで当時はアレルギー性結膜炎とかアレルギー性鼻炎とか呼ばれていた憶えがある。随分いろいろな病院へ行ったが処方されるどんな薬も大して効果がなかった。一度耳鼻科で鼻にチューブを入れられ鼻汁を根こそぎ吸い出されたことがある。でもまた鼻がつまるまでに三分とかからなかった。打つ手なしだ。検査をしたら花粉とハウスダストと絹にアレルギー反応があるらしいとわかった。わかったとしてもだからどうなるというものでもない。体質改善のものすごく痛い注射を、月に一度ずつ半年にわたって打ったりもした。何も変わらなかった。
そんなこんなで基本的に薬というものは効かないんだと刷り込まれて暮らした。春先になると苦しめられたが病歴も二十年を越えた頃には慣れた。
一昨年だったかその前の年だったか「トマトのちから」という錠剤の存在を知り飲んでみたら若干症状が軽くなった気がした。目薬や点鼻薬にも割と効くものが現れたと聞いた。
その花粉症が去年になって治ってしまった。突然のことだった。正確には完治したというわけではないらしく目には若干かゆみがあるしそれに伴うように顔の皮膚も一部かゆい。でもそれだけだ。鼻はまったくつまらない。すうすうと呼吸できる。
体質が変わったとか年をとって分泌が減ったとかいろいろ推測してみるけれどどれも今ひとつ説得力に欠ける気がする。説得力に欠けるついでに思いついたのが花粉症三十年説だ。発症から丸三十一年目に治ったことが根拠で、さすがの花粉症も三十年も経つと音を上げるのではないかという擬人化に基づいている。でも家人をはじめ今も花粉症に悩まされている知り合いなどからはこの説は甚だ評判が悪い。でもまあ何はともあれ治っちゃったもん勝ちだ。