指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

休日出勤は大っぴらにやることで意見が一致した。

昨年までは営業という肩書きながら外回りの時間より倉庫での出荷作業の時間の方がずっと長かった。事実上出荷作業のかなりの部分に対して責任を負っていたため、出荷に遅れが出そうだと判断したときは休日に人知れず出社して仕事をした。
今年の正月に部長になってから今までしなかったような種類の仕事が増え追いやられるように倉庫での時間が少なくなって行った。するとよくしたもので部下の誰彼が自然と責任を持って出荷に当たるようになった。おかげで今年はクリスマス商戦向けの出荷時期を迎えてもほとんど責任というものを感じなくて済んでいる。もちろんそれ以外の責任が増えた訳だが、出荷に関する従来の責任は誰かが肩代わりしてくれている。
通常の業務時間では処理しきれないので休日出勤してもいいかと部下から問われたとき、大っぴらにやるのなら構わないと答えた。つまり週に一回ある会議で休日出勤しなければならない事情を説明し、ひとりでは効率が悪いので有志を募り、出勤した分はどこかで必ず代休を取ること。僕には休日出勤を許可し代休の対象と認める権限が与えられた。でもそれとは別に誰かが休日に出るのなら必ず自分もつき合おうと心に決めている。別にかっこうをつける訳ではなくそれが部下への僕なりの仁義の通し方だと思われるからだ。
先週の土曜、そうした合意の下に初めての公認休日出勤が行われた。僕を含めて三人が出社しそれなりに仕事を進捗させた。電話はかかって来ないし余計なことを言う人はいないしで仕事に没頭するには理想的な環境だ。ただし疲れるのは疲れる。日曜日は半日寝ていた。でもこれでまたひとつ小さな混沌が秩序づけられた。