指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

さびしい。

子供が大きくなってしまったことが自分にもあなたにもさびしく感じられてるんじゃないかというようなことを家人が言った。そうかも知れないと思った。手がかからなくなることがさびしい。そういう事態があり得ることなど想像すらしてなかったけど、おそらくそのさびしさは普遍的でだから世の中では二子、三子が生まれて来るんじゃないかと思う。
二人目つくる?と彼女が言う。考えさせて欲しい、と口に出さずに思う。わからない。考えるべき要素が多すぎる。生命を僕らの意志ひとつで存在させたりさせなかったりしていいんだろうかという倫理的な問題は複雑すぎるのでひとまず措いとくとしても、神経を極度に研ぎ澄ませて母体の安全を気づかう日々の向こうに、それ以上の配慮を必要とする子育てがある。お金の問題もある。子供は兄としてすごく有能かも知れないけどあてにするのは本人にプレッシャーをかけるだけのことのようにも思われる。家人よりも子供を大切にしているように見えるとき、君よりこの子の方が弱いからより多くの配慮が必要なんだよと家人をなだめたけど、第二子が生まれた場合に子供はその理屈を納得してくれるだろうか。
何より新たな出産に家人は耐えられるだろうか?
もしも今から第二子をつくるとすると家人は36か37で出産することになる。子供が生まれたときに僕は38だったけどそれとほとんど同じ年齢での出産だ。リスクはどのくらいだろう?前の出産のとき家人は28で、それでもあんなに大変だったのに。