指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

行く夏。

生徒さんの都合で午後七時に終わるはずの授業を二時間繰り上げて五時までに終えた。その時間になってからの自習生というのはまずいないから例によって電話番かたがた、週末なので少し丁寧に塾の掃除をした。椅子の上に置いてあるクッションを集めて外に出てエアコンの室外機の上に載せ、両手に一枚ずつ持って埃を払っていると近くの公園で小学校一、二年生くらいの男の子がタンクトップと短パン姿でこちらに背を向けてしゃがみ、虫か何かをとっているような姿が見えた。ここからが説明するのがとても難しいんだけどそれを見て、ああ夏が終わって行くなあという気が強くした。しかもその姿とその思いの間に、その男の子を自分の子に重ね合わせるという作業が含まれていた。つまり、その子の姿を目にする→同じ年頃の自分の子供を思い出す→夏の終わりを強く感じる、という流れだ。それからその子が何事もなく家に帰れればいいなあという思いもあった。井戸の底にでもすとんと落ちてしまったように一瞬で心の中の何かが組み替わった。そういうことって説明が面倒で普段はあまり深追いしないようにしてるのかも知れない。でもそこに確かにそれがあったことを残しておきたくて書いてみた。