指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

中1の頃読んだ本。

本を選ぶ時間も含めて往復三時間かけて池袋へ歩いて行って来た。ギャリコの「ジェニィ」はリブロの新潮文庫の棚ですぐに見つかったけど(二冊差してあった)改めて見てみるとこの前没にした北さんの「さびしい王様」ほどじゃないけど結構厚い。ただ活字は子供も読むことを配慮してか大きめで行間も割と空いている。うーん。少し悩むことにして何にプライオリティーを置くか考え直してみた。1.ひたすらおもしろい本か、2.心に残る本か、3.ちょっと背伸びして世界を広げるような本か。「ジェニィ」は1と2の要件を満たしている。1に特化したらどうなる?と考えて意外と星新一さんの掌編集とか個人的にも大好きな椎名誠さんのSFなどもいい気がした。3はちょっといやらしくさすが塾の先生だと思われるようなラインナップで、ヘミングウェイの「老人と海」やカフカの「変身」や、「はじめての文学 村上春樹」などが挙げられた。川上未映子さんの「ヘヴン」も文庫化されていてどうかと考えたけどちょっと読後感が暗すぎる気がして見送った。
ところで中1の頃に何を読んでいたかと言うと、みんなが筒井康隆さんの作品とか推理小説とかSFとかを読み始めた頃にはどういう訳かアーネスト・ヘミングウェイの作品を読んでいた。読んで何かがわかっていたのかと言うとほぼなんにもわかってなかったんじゃないかと思う。ただ切りつめられたハードな文体と、独特の暗く救いのない雰囲気には魅力を感じた。新潮文庫版の短編集の1と2は大久保康雄さんという方の訳だったけど気に入っていて何度読み返したかわからない。それで何が言いたいかと言うと多少背伸びしてよくわからないものを読むというのも、それはそれで意味があるんじゃないかということだ。その年齢で自分からはあまり手を出さない本を贈られるというのも割と大切な体験なんじゃないかという気がする。
でもさすがは塾の先生路線はやっぱその発想の下劣さ加減から捨てることに決めた。それで星さんの本は数が多すぎてどれがおもしろかったかすぐには思い出せないので、椎名さんの「武装島田倉庫」か「水域」にしようと思って出版社を覚えてなかったので検索したらどちらも在庫切れだった。ほど近いジュンク堂にも行ってみたけど棚には見当たらなかった。それでまあちょっと厚いけど結局「ジェニィ」を買った。気に入ってもらえるといいんだけど。ちなみに家人へのプレゼントでこんなに悩んだことはない気がする。最近は欲しいというものを買ってあげるだけで、そういうのって我ながら本当によくない。