指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

村上春樹ライブラリー六回目。

 村上春樹ライブラリー六回目の訪問。前回時間がなくて「全作品1990~2000」の一巻目の解題を後半飛ばし読みしちゃったので途中からもう一度丁寧に読み返す。作者にとって「TVピープル」、「眠り」がとても大切な位置づけの短篇作品であることがとてもよくわかる。

(前略)
 「TVピープル」は位置的に見て、僕にとっては重要な意味を持つ短編集である。内容的に、というよりは(内容については僕は基本的に判断する立場にない)あくまで位置的に。個人的に。ここに収められた作品を書きながら僕は回復し、自分の本来のペースを取り戻し、次のステップに進む準備を整えていた。(後略)
村上春樹全作品1990~2000 1」 作者解題より。

 それから作者は短篇「加納クレタ」と「ゾンビ」に関して「そのナマの挑発性」という風に書き表している。これが何を意味するのかちょっと思い当たる節がないので近く作品を再読したいと思う。他に「使いみちのない風景」は「全作品」収録に当たって「少し手を入れた」とありまた「ふわふわ」も僕が持ってる絵本とはバージョンが異なるようなのでこれら二編を読んだ。もちろん比べて読みでもしない限りどこがどう異なるかなんてわかんないけど。
 次に「全作品1990~2000」の二巻目を手に取る。収録作は「国境の南、太陽の西」と「スプートニクの恋人」。これの「作者解題」は今まで知らなかったことがたくさん書かれていてすごくおもしろかったんだけど時間がなくて途中までしか読めなかった。続きは来週。

(前略)
 具体的なことを言えば、この「国境の南、太陽の西」の主人公であるハジメ君は、「ねじまき鳥クロニクル」の主人公である岡田トオルともともとは同一人物だった。そして「国境の南、太陽の西」の第一章は、ほとんどそのままの形で「ねじまき鳥クロニクル」の第一章として機能していた。だから「ねじまき鳥クロニクル」冒頭でかかってくる正体不明の電話は、基本的にはイズミからかかってきた電話だということになる。つまり現実の空気の中に唐突に切り込んでくる過去の響きである。(後略)
村上春樹全作品1990~2000 2」 作者解題より。

 これには驚いた。「国境の南、太陽の西」が何かの作品からスピンオフ(という言葉が当たってるかどうかわかんないけど)という形で成立した作品だという話は耳にしたことがある。でも具体的にこういうことだとは想像もしてなかった。この後のハジメ君と岡田トオルの違い―過去をどう処理するかという違い―のお話も大変興味深かった。でも時間切れでメモも取れなかったしメモを取るには話が長すぎるようにも思えたので来週読み直すことにする。
 ここに来る度秋の日差しの美しさを痛感する。もともと秋という季節は好きだ。上着を着ても暑くなくなる頃からコートを着ないと寒くて外出できなくなる頃までの間が。気がつくと学内に猫がいたのでスマホで写真を撮って家人にラインする。それからちょっと遠回りして親子三人分のお弁当を買って帰宅。Tokyo FMから封書が来てたのでまさかと思ったら「村上RADIO October Music Fest.」のステッカーが当たった。こういうのあんまり当たる方じゃないのですごくうれしい。シャワーを浴びて一杯やってお弁当を食べて昼寝。来週は前にも書いた通り三回ライブラリーを予約している。酔っ払ってやったものだ。三回はさすがに多いか。キャンセルするなら早い方が先方にも好都合だよね。どうしようかな。