指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

面接。

 各学校のデータを豊富に持ってる訳でもないので基本的に進路指導みたいなものは行わない。つか行えない。うちの塾はたぶん受講料が安いと思うので勉強を教えること以外はあまりやりたくないと思ってる。もしもより正確な進路指導が必要ならしかるべき料金を払ってそういうことを売りにする塾なり予備校なりに行けばいい。でも先方から頼まれればこれはまあいやと言う訳には行かない。正規の業務じゃないのになとどこかで思いながらできるだけのことはしている。去年の春に高校に受かった女子の生徒さんなんてお母さんが月に一回くらいは授業が終わってからアポ無しで塾にやって来て子供が勉強しないだの成績が上がらないだの相談された。そんなこと言われたって返す言葉は毎回大体おんなじだ。おんなじことしか言われないのに頻繁にやって来るのでこりゃ精神安定剤の代わりをしてればいいのかなと途中からは割り切って対応した。結果第一志望の高校に受かって菓子折をもらった。こちらから言わせれば結構長い時間を割いたのに菓子折一個かよということになる。まあでも仕方ない。受かってよかったとするしかない。
 昨夜もそういうお母さんがやって来て(アポは取ってあった)模試の結果を見せてもらいながら進路指導の話が始まった。三つの高校で悩んでるということで見ると第一志望の合格判定がよいときで70%くらい。お母さんと話しても仕方ないので本人に志望を落とすつもりがあるのか尋ねると落とすつもりはないと言う。それでびっくりしたのがお母さんで子供が第一志望にそれほどこだわっていることを知らなかったらしい。なのでじゃあがんばって第一志望を目指しましょうということで本質的なお話はものの三分で済んでしまった。確かに塾でも余計なことはほとんど口にしない生徒さんだけどお母さんがそんなことも知らないというのもどうなのかねえ。親がきちんと話をしろと毎年のように思い毎年のように愚痴ってる気がする。
 あとは教科によってできにばらつきがあるので不得意な教科をどう上げて行くかというアドバイスをする。内申点が低いことをお母さんがだいぶ気にかけてるのでそれにも対応して安心してもらう。等々で結局全部で30分くらいかかった。でもまあ本人の意志ははっきりしたしお母さんは晴れ晴れした顔で帰って行ったしなのでまあ最低限のことはできたかなと思う。そう考えると進路指導に必要なのは知識じゃないのかも知れない。まずは相手の言い分に耳を傾け不安や希望をできるだけ正確に把握すること。それができたら後はできるだけ相手の意向に沿うよう誠実に対応すること。それで充分なのかも知れない。