指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

メロディーはたいていの場合言葉を持たない。

 あるとき何かが心の扉をたたく。それはあるいはギルバート&サンズ社というよくできた名前のでもほんとは架空の会社がつくったスペースシップというピンボールマシンかも知れない。その物語のことならよく知ってる。何度も何度も読み返したから。でも僕の心のノックから始まる冒険はそれほど大がかりなものとはならない。それは池袋西武の地下を歩いているとき耳にしたあるインストゥルメンタルの曲から始まる。歩きながらふと自分がその曲を知ってることに気づく。耳で追って行くとメロディーラインが次々と心の中に立ち上がる。よく知ってる古い曲。でもそれだけだ。誰のなんという曲だったかどうせ思い出せはしない。そういうことって割によくある。知ってはいる。知ってるということは疑いようもなくわかっている。でもこの機会が過ぎ去ってしまえばたぶんもう二度と再現することができないしだからその曲がなんの曲なのかも調べようがない。メロディーはたいていの場合言葉を持たないからだ。ほんの少しでも言葉のかけらがあればそこから検索をかけることができる。でもまったく言葉を持たないメロディーラインはしばらくは心のどこかに留まっていてもやがて時の流れにこすり取られてどこへともなく消え去って行く。後にはなんの痕跡も残らない。肩をすくめる理由さえ残らない。
 でもその曲のツーコーラス目が始まったとき突然女性ボーカルの低音の声が心によみがえり冒頭の歌詞を歌い始める。そしてそれがその曲のタイトルであることに気づく。ユーレカ!曲のタイトルは「Hello, Mr.Sunshine」。帰宅後ウェブで検索するとタニヤ・タッカーというアーティストの曲であることがわかる。タニヤ・タッカー。かすかに聞き覚えがある。1976年。CMソング。マックスウェルというコーヒーブランドの。作曲は故かまやつひろしさん。ちょっとびっくり。たぶん日本のメーカーのCMソングということでそういう人選になったんだろう。もうひとつ驚いたのがライトの関係でCDにはなってないらしいということ。実際図書館のサイトで検索してもヒットしなかった。1976年懐かしのポップスみたいなオムニバスアルバムに収録されてても不思議じゃないと思ったんだけど。EPレコードなら見つかる。でもうちにはレコードプレイヤーがない。レコードからCDに起こしてくれるサービスというのを見つけたのでレコードを買ってそういう業者にデジタル化を頼めば日常的に聴くことができるようになるかも知れない。でもそこまで手をかけて入手すべき曲なのかどうか今はちょっと迷っている。ユーチューブでも聴けるみたいだし。
 それとあんまりこういうことは言いたくないんだけど日本ハム・ファイターズのBIGBOSSは十敗目を喫して会見を拒否したとのことでさすがにそれはないんじゃないかと思う。優勝は目指さないと言ってあれだけ奇行みたいなオーダー組んでんだから十敗ぐらいで落ち込んでもらっちゃ困る。もうちょっと強い覚悟でキャラを貫かなきゃ。じゃないとファンも選手も浮かばれないよまじで。一生懸命応援し一生懸命練習してプレイしてるんだから。まあ監督に関しては若干ざまあねーじゃねーかと思わないでもない。LITTLEBOSSへの途中のMEDIUMBOSSくらいまでは格が下がった気がする。あ、でも今日十一敗目?会見したのかな。それとシーズン前にさんざBIGBOSSをもてはやした野球解説者。忘れないよ。ファンも選手も大切にしてないってことだから球界には二度と復帰すんな。