指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

クレイマークレイマー。

 というタイトルの映画があってダスティン・ホフマン主演かな確かアカデミー賞を獲ったと思うんだけど古い話だなあ我ながら。
 バイト先の客に年配の女性のクレイマーがいてまーさんや他のスタッフも何人か捕まえられてぐちぐち言われたことあるという。普段はすごいおだやかそうでとてもそんな人には見えない。でも何か彼女なりに気に入らないことがあると豹変するらしく結構強い口調で10分とかそれ以上とかクレームをつける。内容は聞いたことがないけどまーさんによれば相手の言うことに一切耳を貸そうとせず自分の主張を繰り返すらしい。僕もその人から話しかけられたことがありそのときは結構びびった。ただクレームをつける相手はまーさんとか一部の目をつけられた人だけでたとえばうっちゃんなんかはその人からウケがいいので特にトラブルになったことはない。その人が今日僕に向けて牙をむいた。施設を利用する上でのルールの解釈についてで確かに施設側にもあいまいなところがある。でもそれを杓子定規に受け取ってクレームをつけるのもどうなのという気がした。あなたがかけられていると主張するほどの迷惑なら利用者のほとんどがかけられてるし他ならぬあなただってそれくらいの迷惑を人にかけてるかも知れない。どうしてそういうことが想像できないんだと思うと途中からむかっ腹が立ってきて来るなら来いよどこまでもやってやるよというモードに入ってしまった。自分で言うのもなんだけどこうなると僕は割に恐い人だ。前にも書いたように立ち上がれなくなるまで打ち続ける。そういうことをおっしゃいますがお客様もこうですよねと返すと相当頭に来たみたいで話の途中で言い返せなくなり自分からどこかに行ってしまった。まあこいつにはかなわないと思ったのかなと思うと僕としてはいい気味だった。僕が困ってると思ったんだろううっちゃんが社員さんに知らせに行ってくれていちばん偉い人が出てきたんだけど僕から事情を聞いただけでその客と直に話しに行こうとはしなかった。うっちゃんもまーさんもそのことを不服に思ったらしい。でも僕としては全然それで構わない。誰でもトラブルはごめんというのはわかるしすでに雌雄は決している。客の帰り際まーさんがケアしなければならない場面があるので目をつけられてるまーさんがとばっちりを受けるとまずいと思いそばについてたらその客がでかい音をたててドアを開け閉めしてまーさんの前にやって来るやいなや社員を呼べという意味のことを言った。それでまーさんは社員のところに案内してそこでも一悶着あったらしい。今まで誰もそこまで怒らせたことはないので僕としては新しいステージを切り開いたといい気になってるけど会社側としてはもちろん客をそこまで怒らせてどうするというお咎めがありうると思ったので終業後しおらしく事務所に入って行くとそのクレイマーの対応に当たった頭のあまりよくない社員が武勇伝みたいに対応について語っててまあいいやと思った。帰って家人にその話をすると認知症の初期症状じゃないのという感想だった。なるほど。
 明日もやって来たらにっこり笑って挨拶をしようと思っている。