指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

塾をやっていていちばんうれしいこと。

 今日は中一からの入塾を検討しているという小六の生徒さんが体験授業を受けにやって来たので他の小六の生徒さんと一緒に数学の予習をやってみた。中一の数学はうちで使ってる教科書で言うと一昨年だったか改訂される前は負(マイナス)の数を導入することが一番最初の単元だった。改訂されてからはその前に自然数素数素因数分解の学習が数ページだけ追加された。従来素因数分解は中三で出てくることになっていた。でもそれほど難しいことでもないし知ってればそれなりに便利なのでなんで小学校で教えないのかなと個人的には思っていた。だから中一の最初で教えるというのには大賛成だった。
 ちなみにたいていの方はご存じだと思うけど一応簡単に説明しておくと自然数とは正の整数のこと。マイナスとゼロを含まない整数だ。素数は1とその数でしか割ることのできない自然数を指す。2は1×2でしか計算できないので素数。3も同じ。でも4は1×4の他2×2でも計算できるので素数ではない。つまり2以外の偶数はすべて素数にはならない。それと1は素数には含まれない。素因数分解とは素数以外の数を素数の積で表すことを言う。たとえば60を素因数分解するとする。60=6×10。でも6も10もまだ素数ではないので6=2×3、10=2×5とさらに分解すると60=2×3×2×5=2×2×3×5となる。なんか小さい順に表記するのが暗黙の了解らしいので60=2×2×3×5が正解。ただしあくまで暗黙の了解なので式の素数の順番が異なっていても間違いではない。ちなみに似た言葉に「因数分解」がある。でも自然数のみを対象とする素因数分解と基本的には多項式を対象とする「因数分解」とはまったく共通点がないとは言えないもののまあまあ別物。こちらは説明すると長くなりそうなので割愛します。
 というような授業を小一時間おこなった。その後体験授業の生徒さんは帰り残りの生徒さんはしばし休憩。各々お気に入りのキャンディーを取り有志がホワイトボードに落書きするいつものリラックスタイムだ。休憩後ふだんはそれほど授業に関心を示さない小六の男の子がさっき配られた中一向け数学の教材を手にして言う。この続きひとりでやってもいいですか?つまり素因数分解の後にあるマイナスに触れた単元をひとりで予習していいかという意味だった。そのモチベーションの高さに驚きながらでもそれは次回解説するからみんなでやろうよと伝えそんなにおもしろかったかいと尋ねるとすごくおもしろかったと言う。この子は小一のときに入ったいちばん長く来てくれてる子なんだけど勉強に対してこれほどまで前向きな姿勢を見せたのは初めてだと思う。一方こちらとしては授業がおもしろかったと言われる以上にこの仕事でうれしいことは他にない。だから問題集の素因数分解に触れたページを開いて解いてみるかいと問うとやりたいと言う。それでちょっと時間はかかったけど解き終えて答え合わせをするとかなりきちんと理解できてることがわかった。その後この続きはいつやりますかと尋ねるのでじゃあ毎週木曜日にやることにしようかと答えるとわかりましたと目を輝かせる。こういうのが本当に心の底からうれしい。ある意味では体験授業の生徒さんが入塾を決めてくれるよりももっと。