指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ふたり辞めることになった。

 今月は相次いでふたりの生徒さんが塾を辞めることになった。ひとりは中三になったばかりの男の子でこの子は僕にとても懐いてくれて親から他の塾に行けと言われたときも週に一度でいいからうちの塾に通いたいと言って規約では週に二回来ることになってるところを特例にして週一回だけ通って来ていた。それが中三になって他の塾の通塾日が増えたそうでうちに来られる曜日がついになくなってしまい辞めることになった。すごい努力家で中一の頃は定期考査でも平均点を割ることはなかったそうだ。つまり偏差値で言えば50はキープしてたことになると思う。それが中二になるとずるずると成績が落ち始めたそうだ。彼の親御さんには言ってないんだけど僕の見るところでは若干学習障害があるように思われた。数学の質問をたまに受けるときはその独自の理解の仕方に驚かされることがあったし英単語の暗記には本当に苦労しているように見えた。国語の読解力も徐々に怪しくなり最後には壊滅的になった。中一の学習内容にはその厳しい努力でなんとか追いついて行けてたものが中二になって学習内容が高度になると少しずつ置いて行かれてしまっているように見えた。正直どの塾へ行こうともその状況を打開できるとは思えない。僕としては彼がある種の学習障害を持つことを親御さんに気づいて欲しいと思うんだけど随分前にも書いたように塾としてはおたくのお子さんには学習障害が疑われると面と向かって言うことができない。塾の落ち度を本人になすりつけてるようにとられかねないからだ。だから最後までそのことには触れずに終わることになると思う。懐いてくれてるだけにこちらとしてもいろいろ本当に残念なんだけどこれ以上手の出しようがない。
 もうひとりは中一になったばかりの男の子で最近お母さんから塾へのクレームめいたメールが増えてきたので辞めることになるんじゃないかなとうすうす感じていた。そのクレームの内容というのが本当に焦点を結んでなくて要はお母さんの希望に塾の指導が追いついてないということが言いたいらしいんだけどまずその希望の内容というのがはっきり伝わってこない。こうして欲しいという具体的な要望が書いてないからだ。現実にはあり得ないような自分なりの理想の塾を思い描いてそれに満たないからと文句を言ってるようにしか思えない。そういうことを言い始めた親は近く塾を辞める判断を下す。この人だけでなく今までにもそういう例はあった。そういう人は決まってうちの塾を悪し様に言うんだけどこちらはなんで悪く言われてるんだかわからない。言いがかりとしか思えなくて来るメール来るメールに毎回力なく返信してるうちに相手は勝手にエスカレートして最後には辞めると言い出す。判で捺したように同じ展開だ。礼儀とかかなぐり捨てて文句を言われてなんでそこまで言われにゃならんのだと思えてすごく後味が悪い。でもまあ世界にはもっとひどい悪意もあるだろうしそれに比べりゃマシと思って我慢している。冷静さを失った方が負けなんだよ。だから塾ではなくこの人の負けなんだと自分に言い聞かせている。
 話は変わる。ここのところずっと胃が痛くて市販の胃薬が手放せなかった。それがこの前有休をもらってバイトを二日休んだら痛みがぴたりと止まった。復帰するとまた痛み始める。要するにバイトが相当なストレスらしい。とわかってもこの先当分辞める訳には行かないのでだましだまし痛みとつき合って行くしかないんだろう。60歳を越えても雇ってもらえるし一日に最大十時間以上勤務できるし家からすぐ近くのところにあるしで今のバイト先のメリットはすごく大きい。でも体はきちんと悲鳴を上げてるんだな。