指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

村上春樹ライブラリー十七回目。

 また夫婦で朝マックしてから家人は駅前で買い物。僕は早稲田大学に向かう。まだ雨は降り始めていない。ただ雲は相当厚そうに見える。今日は予約しなくても入れる日なので予約はしていず入館証も受け取らなかった。行く度に入館証の写真だけは撮っとくようにしてたのでなんだか階段を一段踏み外したような気がした。出迎えてくれた女性のスタッフさんは知らない人で先週いた顔見知り(たぶんこちらからの一方的な)のスタッフさんはいないように思われた。ちょっと残念。お目当ての「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」の文庫版を手に取って大きなテーブルの前に腰掛けてページをめくる。単行本に収録されてないインタビューはひとつだけで2011年6月にスペインで行われたもの。スペイン人のインタビュアーとの英語でのインタビューということでなんかこうどことなく読んでてしっくりこない一本になっている。でもここで村上さんはある種の事柄についてとても率直に語っていてそういう意味では驚かされるしまた大変参考にもなった。「カラマーゾフの兄弟」と「グレート・ギャツビー」の共通点は愛についての物語であることだなんて村上さん以外になかなか言える言葉じゃないような気がする。言われてみれば確かにその通りだけど。それからまた階段を下りてお手洗いに行こうとしたら入り口の横で顔見知り(たぶん以下略)のスタッフさんに会えたのでこんにちはと挨拶した。やはりこちらのことは覚えてない印象を受けた。まあそれはしょうがない。一年以上のブランクがあったんだから。お手洗いを出るとそのスタッフさんも一階に下りてきていた。久しぶりに一階の蔵書の背表紙をひと通り確認してから階段を上りながら左手の書架の蔵書にも目をやる。それから思いついて三階に上ってなんの展示が行われてるか確認しようとしたら今は展示準備中で展示室には入れなくなっていた。その先にはディスプレイが置いてあり椅子が何脚か並べられていてディスプレイでは村上さんの朗読会のビデオが流されていた。多崎つくるの一節だった。数分の間座ってそれを観てからそこにいた別の女性スタッフさんに会釈して―ちなみにその階にいた客は僕だけのようだった。―階段を下りて二階に戻った。そのまま入り口から外に出てしまおうかとも思ったんだけどやはり顔見知り(以下略)のスタッフさんに挨拶しときたくて再度一階まで下りまたお伺いしますと声をかけた。是非またいらして下さいと返されたけどやはりこちらのことを覚えてる感触はなかった。今日は入館証を返す必要がないのでそのまま村上さんのお店ピーター・キャットに置いてあったというグランドピアノ脇の入り口から外に出た。構内を歩きながら思ったのはまるで壁に囲まれた街の図書館にいる女の子さながらだなということだった。図書館ということで舞台も不思議に一致してる。僕は彼女を覚えている。彼女は僕を覚えていない。でもまあそういう思いつきってたいてい考えすぎなんだろう。そんなに意味深いできごとでもきっとないんだろう。
 それから遠回りしていつものお弁当屋さんでお弁当を三つ買って帰った。家に着いたのがちょうどお昼頃。少し前から雨が降っている。帰宅後はいつもと同じ。お風呂を洗って(バイトのない日は時間があるので僕が洗うことにしてる。まあ家人はそんなことしなくていいと言うけど。)シャワーを浴びて一杯やってからお弁当をほおばる。子供は昼食後にバイトに出かけ家人と僕は昼寝。起きると夕方から夜にかけて塾で授業する。金曜日の夕方は一週間でいちばん生徒さんが多くて例によって多学年の合同授業なのでかなり大変だ。こちらは疲れ果てるけど生徒さんたちはわいわいと楽しそうだ。まあ楽しいのもいいかなと思っている。明日はキリンシティーにビールを飲みに行く。子供も一緒なので高くつくけどまあしょうがない。おいしいものを食べさすのがいちばん喜ぶからね。夕方は今週お休みした生徒さんの振替授業があり夜は三時間半バイトに行く。それでもかなり楽な日だ。明後日の日曜は終日お休み。