指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

「綿の国星」を読んでいる。

 花とゆめコミックス版の「綿の国星」第二巻を読んだ。「たそがれは逢魔の時間」が収録されている。これも若い頃何度読み返したかわからない作品のひとつだ。今読み返すと少女娼婦である邪夢(じゃむ)の意図は最初から一貫していてそれは主人公を誘うことにあることがわかる。それもかなりあからさまな誘い方だ。たぶんこういう風に積極的に出られたら中年男であってもあるいはそうであるからこそかなりきちんと心を揺さぶられるだろう。中年もとっくに通り過ぎてしまった今ならそれがよくわかる。それが若い頃にはわからなかったようだ。いい年してなんでこんな若い女の子を相手にしてんだという思いがどこかにあった気がする。だから今読んだ方が若いときに読んだよりずっとリアルなお話に思える。僕もれっきとした妻帯者だけどこういう風な心の揺れというのは今もある。つい昨日も触れた通り―。もちろんそれはどこへも辿り着かない。でもだからと言ってないことにはできない。
 その他に「綿の国星」シリーズとしては「ペルシャ」、「シルク・ムーン・プチ・ロード」、「ミルクパン・ミルククラウン」が収録されている。どれもすごくいい作品だ。それで思い出したんだけど「綿の国星」は劇場版アニメになってたはずだ。新宿の映画館にひとりで観に行った。とても明るい気持ちで観た記憶があるのは大学に合格した直後だったからだと思う。今ウィキで調べたら公開は1984年2月。同じ年の3月始めには合格が決まってたので久々にすごく明るい気分だったんだろう。DVDにもなってるので観ようと思えば観られる。でもどうしようかな。がっかりするとやだなと思いつつとりあえず今は二の足を踏んでいる。