指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ヤマザキさんのこと。

 ヤマザキさんはある私大の法学部に通う女子学生で同じバイト先の違うフロアで働いている。つまり普段は僕たちとまったく違う仕事をしている。ミーティングとかで顔を合わす機会もあったので顔だけは知ってたけど名前もつい昨日まで知らなかった。もちろん言葉を交わしたこともない。それが最近になってこちらの仕事も覚えたいということで僕たちの職場にも来るようになったらしい。彼女の入る時間帯にはこれまで僕は入ってなくてだから昨日まではまったく接点がなかった。昨日は三十分だけシフトが重なって僕としてはああこの子はこっちの仕事もするようになったんだと初めて知った。そしたら僕の顔を見てわざわざこっちにやって来て自己紹介した後今日はあと少しで上がりなんですけどまだ教えてもらってない作業がいくつかあるので次に一緒のシフトになったときに教えて下さいと言う。なんて言うかすごい謙虚な印象でしかもこちらを頼り切った感じがけなげでかわいらしい。かわいらしいって姿形のことじゃないよ。その姿勢がってことだよ。それで一気に好感を持った。
 そしたら今日は僕の勤務中に姿を見せて僕を見かけるとやはりわざわざ近寄って来て今日は遊びに来ましたと言う。ごゆっくりと声をかけるとにっこりほほえんでくれる。ほんとに感じがいい。きっと別フロアの部署にも彼女のファンがたくさんいるんじゃないかな。というのが昨日酔っ払って突如登場させたヤマザキさんの詳細です。僕は自分と認識してもらって近寄って来る異性に弱いということになるんじゃないかと思う。読み返してみてそう思う。