指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

もしかしたらこれでお別れ。

 何度か触れたバイト仲間のかごくんの話。日曜日の午前中だけシフトに入ってた彼が忙しいのか来なくなって随分経つ。それが昨日の午後突然シフトに入って久しぶりに顔を合わせることができた。大学四年なんだけど卒業研究の評価が定まるまではまだ卒業できるかどうかわからないそうで就職も決まってるのになかなか大変な話だ。もしかしたらもうバイトには来られないかも知れない。それを聞いていろいろお世話になったし(遅刻や欠勤で世話をかけられたこともあったけど)仲良くもしてもらったお礼も兼ねて何かあげたいと思った。でも急なことであげるにふさわしいものを用意してない。そこでたまたま持ってたお気に入りのシャーペンをあげることにした。鉛筆は仕事で使うことがあるので会社で用意してくれている。でも僕は鉛筆よりシャーペンの方が好きなので使うときにはマイシャーペンを持参していた。そんなことしてるの僕だけみたいだけど。それを差し出して書き心地がいいのでこのシャーペンは何本かもってるから一本あげます、いろいろお世話になったお礼ですと伝えた。するとかごくんはとてもうれしいです、就職しても使わせてもらいます、○○さん(僕のこと)を思い出しながらと言ってくれた。あげて本当によかったなあと思った。なぜだか僕は彼のことが心から気に入ってるみたいだ。考えても理由はよくわからない。帰宅してから家人の顔を見たらなんだかすごく悲しい気持ちになってこの一件について報告しながらしゃくり上げて泣いた。少しして落ち着いてからでもそれっていい話だよねと家人が言った。