- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/10/30
- メディア: 文庫
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どうしてそれほど多くのアルコールを飲むようになったか考えてみると、村上春樹さんの小説に行き着く。寝る前に指二本分のウィスキーをグラスに入れて飲んだ、みたいな記述が確かどこかにあって、当時昼夜逆転生活を送っていたので、試しにやったらよく眠れた。そこから始まっている気がする。
ビールでは昔も今も、ライオンの生ビールが大好きだ。どの季節に飲んでも本当にうまいと思う。ウォッカでは、ペルツォフカという唐辛子入りの辛いやつ。ジンなら冷凍庫で冷やしたボンベイ・サファイヤ。そこまで冷やすと粘度が上がり、グラスに注ぐときとろりとした感じになる。そして、「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」を読んでから、ボウモアの味を覚えた。
その魅力を言葉にするのは難しいし、その難しいことはすでに村上さんがなさっているので、ここでは書かない(と言うか、書けない)。ただ何かよいことがあったときに一本のボウモアを買い求めて、本に書いてある通り同じ量の常温の水で割り、しみじみうまいなと思いながら飲んでいるだけだ。
政治も経済も地理も歴史も、僕は不得意で疎いんだけど、同じように不得意ながら、いつかわかりたいと思っていることがいくつかある。そのひとつが酒の味だ。今のところ、他人に話して通用するほど普遍性のある舌は持っていない。上に書いた銘柄も、ただ個人的な好み、という範囲に留まっている。でもボウモアをうまいと思ったとき、ほんのわずかだけど一角を崩せたような気がした。
村上春樹さんに始まり村上春樹さんに終わる(量だけはおそらく凌駕してると思うんだけど)アルコール・ライフだが、それでも結構満足してると言いたいのかも知れない。体さえこわさなければ、ね。