指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

小林緑は、魚の絵の編み込みのある黄色い毛糸のチョッキを着ていたか?

ノルウェイの森 (下) (講談社文庫)

ノルウェイの森 (下) (講談社文庫)

連日村上春樹さんの話題ですいません。「村上モトクラシ大調査」については、僕などが説明するまでもないと思うんだけど、要するに村上さんの作品に関するアンケートだ。すでに終了してしまった今回のふたつのアンケートのうちひとつが、以下のものだった。

村上春樹さんの長編小説の、登場人物の服装で、あなたが好きなのはどれですか?

選択肢は11個。その中に「『ノルウェイの森』小林緑の魚の絵の編みこみのある黄色い毛糸のチョッキ」というのがあった。さて、小林緑はそんなチョッキを着ていたのだろうか。そんな記述があっただろうか。

ノルウェイの森」は好きな小説のひとつで、通しでは10回以上、拾い読みも含めるとページを開いた回数は100回を下らないと思う。でも、小林緑の服装なんてひとつも思い出せない。あ、違うか、ひとつだけ覚えている。ワタナベ君とお父さんの病院に行くときやけに短いスカートをはいていて、ワタナベ君の住む寮の寮生や病院の先生などの目を惹きつけていた。

で、調べてみた。結果から言うと、もちろん小林緑は魚の絵の編み込みのある黄色い毛糸のチョッキを着ていた。ワタナベ君が直子のところから帰って来た直後に大学で会うシーンで、僕が持っている文庫版の「ノルウェイの森」下巻の41ページに書いてあった。でも、その箇所を見つけたときも、読んだ記憶がまったくよみがえらない。

うーん、自分の読みなどというものは、まるでアテにならないんだなあ、と改めて実感した。これが登場人物の服装とかなのでまだいいような気もするけど(よくないかも知れないけど)、もっと重要なことをごっそり読み飛ばしている場合もありそうな気がする。「カラマーゾフの兄弟」にも「魔の山」にも「さようなら、ギャングたち」にも、実はそうした空白地帯が人知れず広がっているのかも知れない。

ちなみに上記のアンケートで僕が選んだ選択肢は以下のものだった。「『ダンス・ダンス・ダンス』ユミヨシさんのライト・ブルーのホテルの制服」。ライト・ブルーというのは例によって憶えていなかったが、要するに「ダンス・ダンス・ダンス」という作品と、ユミヨシさんがとても好きだからだ。