指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

本が読めない環境。

音楽が鳴っていると本が読めない。たぶん集中力が弱いせいだと思う。だからうちで本を読むときは必ず音楽を止める。テレビがついていればそれも消す。沈黙の中で修行僧のようにページをめくっていると弱いながらも集中力が一本の円錐のような形に引き絞られて行くのがわかる。それは結構快感だ。
でも喫茶店などでは低く音楽がかかっていてもまったく気にせずに読書に集中することができる。比較的ノイズの多い電車の中とかでも同じだ。これはどういうことなのだろうと考えたことがある。
結論としては、音を出しているものを自分でコントロールできるときは音が気になる、ということのように思われた。喫茶店のBGMや電車のノイズは自分では止めることができない。その場合は諦めて音を受け入れることを無意識に決心し読書に集中することができる気がする。まあ簡単な理屈だ。
しかし自分がコントロールできる音とできない音との中間みたいな音がきこえる場合もあった。怪我で入院していたときだ。相部屋の患者がよく音楽を流していた。気にしてヘッドフォンを使ってくれることもあったが、スピーカーで聴いていることもある。後者の場合は結構悩ましい思いをさせられた。音を止める手段はすぐ近くにあるのに、それを使うことができない。このときは音を無意識に受け入れることがうまくできなかった。そして現在のようにうちにいても四六時中子供が騒ぎ回っている場合も同じように読書が進まない。叱りつけても逆効果になるだけで途方に暮れている。