指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

イヴァン・カラマーゾフのヒューマニズム。

イヴァンが神のつくった世界を受け入れないと言う根拠は、まるで罪のない子供たちの血と涙が世界中で流されていることにある。人間は誰でも罪を負っているとしても子供はそれから除外されるとイヴァンは考えている。子供たちが苦しみ続けている世界で、自分はそれに目をつぶって神と手を打つことなんてできない。だいたい無垢な子供たちを傷つける者等に対し、いったい誰が彼らを許す権利を持つのか?僕はここで思いがけずイヴァンの人類に対する深い愛に行き当たった気がしてイヴァンを好きになる。以前読んだときもそうだったし、今回もそうだった。イヴァンは神を認めないのではなく、神のつくったこうした不完全な世界を受け入れることをよしとしないと言っている。僕はそのイヴァンの言い分を受け入れていいような気がする。もちろん自分に信仰が無くイヴァンの言い分を受け入れるのに抵抗が少ないからだ。
アリョーシャの反論はではイエスの立場はどうなるのか、ということだ。イエスは無辜の血を流すことによって人類全体の罪を贖ったとされる。そのイエスになら、すべての人を許す権利があるのではないかと。
このひと言に答える形で、イヴァンは「大審問官」を語り始める。