- 作者: 古川日出男
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/22
- メディア: 単行本
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文体がすごい。ハードボイルドと言うか、歯切れがいい。対象が過不足無く突き放されていて硬質だ。それがたまに挟み込まれる情感に満ちた言い回しを効果的なものにしている。また、作品内で守られている叙述のルール、叙述のための取捨選択のルールが強固で、その磁力の中で叙述されたたいていの事柄は信ずるに値するようになっている。ピッチングで言えばストライクゾーンを上下左右いっぱいいっぱいに使いながら、100球投げ終えてもボール球はひとつもないといった感じだ(実際にはボールくさい球も何球かはあるんだけど、それが逆に作品の魅力みたいに見えてしまう。)。ここにある書き方以外には、どんなやり方でもこの小説を書く書き方はあり得なかった、そんな動かしがたい文体になっている。
でも本屋大賞の何番目かに入るほど一般ウケする作品とはどうしても思われない。一読して十全に理解できる小説とも思えない。もっとも、そう思うのは人並みはずれて歴史に興味のない自分自身のせいかも知れない。