指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

意外とハードワーク。

金沢に新しくできる得意先の設営のお手伝いに行ったのだが、せいぜい二、三時間と思っていた仕事が計八時間くらいかかってびっくりした。大変急ぎの仕事で先方の状況を把握し切れていなかったせいだ。消防車が要請されたので放水の用意を整え現地に赴いたら、起こっていたのは河川の決壊だった、みたいな感じだ。不慣れな土嚢積みをして堤防をふさいだ後、誰かが消し忘れた煙草の火を消すついでにささやかな水たまりをつくって、割り切れない思いで帰って来た。こんなに辛い出張は初めてだ。
晩に有志の呼びかけでほとんど面識のない人たちと飲みに行った。香林坊の何とかいうお店で、雰囲気も料理も酒も申し分なかったが、仕事の疲労と打ち上げは別ものというノリについて行けず激しく消耗した。こんなことやってて何が楽しいのだろう、と思わず口にしそうな自分を抑えていたら、そう口に出して叫んでいる夢を見た。
自分らしくある、自分の欲望を否定しない、ということに老若問わずこだわっていて、それは彼らの中では美徳なんだろうと思う。できれば僕だってそう思って生きて行けたらいいなと思う。でもそうはなれずに、彼らとの距離をすごく感じる。懐かしい停滞感だ。
そんななくもがなの停滞感が、今回の仕事をよりハードワークと思わせている。