- 作者: 岩宮恵子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/05/29
- メディア: 文庫
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でもこの「思春期をめぐる冒険」は特に深い考えもなく読み始めた。著者が臨床心理士なのであまり文芸っぽい文体にはなっていないだろうと思われたせいかも知れない。同じことだが文学以外の専門家なので何か目新しい論点が持ち込まれているのではないかと思われたせいかも知れない。
でも読んでみるとこれは予想以上にすごい本だった。「羊をめぐる冒険」から「アフターダーク」に至る長編で村上さんが繰り返し同じテーマを扱っていることが明らかにされているのだ。そんなの信じられます?この本を読む前の僕だったら信じられない。でも今は多少の留保はあるかも知れないけど信じられる。
同じ用語でも文脈によって概念がぶれるときがあるような感じがわずかにしたけど、そんなの気にならないほどのおもしろさだった。暇つぶしに読めるけど得られるものは大きい。読んでよかった。
村上さんの作品の中では「ダンス・ダンス・ダンス」がすごく好きなんだけど、驚いたことにその理由までこの本が教えてくれた。