指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

リスタート。

中上健次と村上春樹―“脱六〇年代”的世界のゆくえ

中上健次と村上春樹―“脱六〇年代”的世界のゆくえ

最近長い評論なんて全然読んでなかったので読むのにひどく苦労しそうだと思いながら読み始めたらそうでもなかった。中上健次さんの秋幸サーガ(「岬」、「枯木灘」、「地の果て 至上の時」)と、村上さんの鼠三部作(「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」、「羊をめぐる冒険」)がある視点から眺めるととても類似している、というのが多分主要な論旨。こういう本ってほんとに説得力が命だと思う。あまり細かな証拠まで拾い上げて自説を補強し始めると逆効果になる。ややそういうところが無くもない気がしたけど、大筋では納得しつつおもしろく読んだ。浜村龍造と鼠がいずれも三作目で縊死してるって、そんなこと、言われるまで気づかなかった。中上さんと村上さんの両方の読者の方にはお勧め。