- 作者: 高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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高橋さんの新刊を先ほど読み終えた。高橋さんの作品について書くのにネタばれを気にしなければならないことになろうとは思ってもみなかった。それほどラストが衝撃的だった。ちょっとふるえた。大体この名前でこの国なんだから思い当たるのはあの人しかいなかった。そして読者がそれに思い当たることを作者が勘定に入れていないはずはなかった。その人へのオマージュなりなんなりがきっとどこかで出て来るに違いない。でも物語が進んでもそうでもなさそうだったので、見込み違いだったかなと思っていた。その人は49歳で亡くなったのだった。主人公は50代だ。見ることのできなかった今をその人は物語の中で見ている。そんな気がした。
高橋さんの描く哀しみ、ある種のイノセンスがそのイノセントさゆえに引き受けなければならない哀しみがとても好きだ。「さようなら、ギャングたち」にもそれはあるし、「ゴースト・バスターズ」にもそれはある。「ペンギン村に日は落ちて」は言うに及ばない。一連の明治っぽい作品も同じだ。今回もそれがあってうれしかった。ただ文体にちょっと違和感があった。ところどころメロドラマっぽくゆるんでいる。その意味についてはもう少し考えてみたい。でももしかしたら高橋さんの作品を読むことは、文体への違和感を体験することそのものなのかも知れない。そしてそれは優れた作品の多くに共通していることなのかも知れない。
午後は絲山さんの新刊を読んで過ごす。もし読み終わってしまっても、まだ高橋さんの評論集が待っている。