指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

東京ディズニーシー。

今でもはっきり憶えているけど、東京ディズニーシーがオープンしたと朝のワイドショーで取り上げられているのを見たのは、出産後の母親にあてがわれる産婦人科の豪華な一室でだった。子供が生まれた翌日だった。ベッドがあり、テーブルとソファーのセットがあり、大きなテレビと保育器があった。専用のトイレとシャワールームまでついていた。でも保育器の中に子供が入れられたのはそこにいた一週間を通してほんの数時間だった。お産が重くて子供は生まれたとき泣く元気もなかったので、ほとんどの時間新生児室の方の保育器に入れられていた。家人と僕は許された時間にのみそこまで赴いて、看護婦さんの立ち会いの下で子供を抱いたりミルクを飲ませたりした。家人はベッドで眠り、僕はソファーで眠った。
里帰り出産だったのでその数日前までの一ヶ月あまり家人と僕は別々に暮らしていた。だからその番組は本当に久しぶりに夫婦水入らずで見る番組だった。これから何年すれば子供を連れてディズニーシーに行くことができるんだろう、と話し合った。悲しいほど遠い未来のことのように感じられた。
6月30日までの割引チケットがあるというのを家人が聞きつけて来たのがきっかけとなり、梅雨に入るまでに何とかしようとどたばたとディズニーシー行きが決まった。ウィークデイに会社を休んでゆっくり、と思っていたら子供が皆勤賞狙いで学校を休みたくないと言うので、先週の土曜日に行って来た。
朝の9時前に舞浜に着いて、出口を通ったのが夜の9時だった。ファストパスを使ってもあちこちでたっぷり待たされたけど、子供は無制限にDSをやってよいことにして九つのアトラクションと二回の食事を楽しんだ。子供の誕生とシーのオープンからもうすぐ九年が経つ。