指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

土曜日。

生徒さんの都合で夜の授業が急に無くなった。どこかで振り替え授業をしなければならないけどとりあえず今日は早く帰れることになって気分が軽い。昼食後いつもの時間に塾へ行き外に看板を出してから窓を開け机の上を水拭きする。それから家人が用意してくれるお茶を飲みながら本を読む。塾の前はクルマはたまにしか通らないけどお年寄りから小さな子供たちまで様々な人が歩いて行く。曜日によってはお豆腐屋さんが独特ならっぱの音を響かせて通るし、バイクでやって来る郵便配達、新聞配達の人の他、自転車も多い。曇りガラスにぼんやり映るそういう人たちの影を目で追う。部屋の奥にまで差し込むほどではないけど昼間の間道に面した大きな窓はいつも日光を受けて明るい。それがとても気持ちいい。建物は古いけど塾の居心地は本当に良くて生徒から聞かされて父兄の間でも評判だそうだ。それがどういうことであれ評判はいいに越したことはない。