指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

十五連勤の終わり。

 バイトは今日で十五連勤がおしまい。明日は夏期講習のみで午前中のバイトはない。と思ったら塾の時間中なんだかつらくてしょうがない。バイトがないと思うだけで気合いが削がれちゃうのかな。とにかく我慢して授業を終えてお風呂に入るのも本当にしんどかったけどなんとか済ませて一杯飲み始めたところ。夕飯はそうめんということで今家人がつくってくれてる。すごい楽しみ。
 アルコールが効いてきてちょっと元気になった。そうめんもとてもおいしかった。今日はこの前バイトを辞めた女子学生がお客さんとしてやって来た。辞める理由はフリースクールのボランティアをやりたいからということだったのでそういう志があるんだったら若いんだしいくらでもチャレンジしたらいいと思った。ただ個人的にはボランティアという仕事のあり方にずっと疑問を抱いている。仕事というのは対価を支払ってもらっててもすごくきついことがある。それを無報酬でやるというのは並の人間には時として耐えられないんじゃないかと思うし無報酬でやらされた仕事の対価をどこかで別の誰かが勝手に受け取ってる恐れなんかもあるんじゃないかと思う。サービスを受ける側が無料でそのサービスを受け取ることをなんの疑いもなく肯んじてるというのもどうかと思う。つまり僕にとってボランティアとはとてもいびつな形をした不自然な見かけの生き物みたいに思われている。善意は地獄への道だぜと吉本隆明さんも言っている。
 そしたら彼女は小三のちょっと障がいの疑われる生徒さんとの一対一の授業に回されたそうだ。ところがその子は彼女曰く「当たりが強くて」未熟な自分にはとてもフォローし切れないと思い知ったと言う。それですぐに辞めてしまった。もちろん僕にはそんな彼女を責める気なんてさらさらない。それ見たことかと悦に入る気もまったくない。ただ若い人はそうやって理想と現実の隔たりを知るもんなんだよねと思うだけだ。それでここのバイトにまた戻りたいと言うのでそれは大歓迎だと話した。すごくちゃんと仕事する子だしね。あなたが辞めた後で何人か学生さんがバイトに入ったけどと僕は言う。ちゃんとした人はすごく少ない。だからあなたから見たらストレスフルかも知れないけどあなたも含めてうっちゃんとかまーさんとか僕とかの間には仕事をきちんとやる人という信頼感がある。その場所に戻って来てくれると僕としてはとてもうれしいと伝える。最後に彼女は今日○○さん(僕のこと)に会えてよかったですと言ってくれた。僕ももちろん彼女に会えて本当によかった。今これを書きながら思い出してもそれだけで気持ちが明るくなる。本当にまたバイトに戻って来てくれたらとてもうれしい。