指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

豊川稲荷にお礼参りに行く。

 豊川稲荷東京別院のことは家人が聞きつけて来てちょうど一年前の十一月十日にお参りに行き融通稲荷で融通金を拝借して来た。融通金というのは金運アップのためのお守りのようなもので小さな袋の中に十円玉が入っていてお参りすれば誰でも持ち帰ることができる。お財布に入れといて願いが叶ったときかちょうど一年後にお礼を添えてお返しするとよい。エクセルにまとめた塾からの月収を見ると昨年は夏を迎えた頃から徐々に収入が下がって行き十一月頃はこのままじゃちょっとやばいかなというところまで来ていた。それでお参りに行ったんだけど状況は好転せず今年の三月までによいときの半分くらいまで月収が下がり続けた。死ぬ気でバイトを入れ続けた由縁だ。それが四月に入るとぐっと生徒さんが増えて五月ぐらいには今の水準(月に百時間くらいバイトすればまあまあ食べて行ける水準)まで戻せた。その他に昨年は家人の収入が一定のラインを越えたためすでに書いた通り子供の奨学金と学費の免除額が減らされ健康保険料は三倍になり国民年金の全額免除も解除されて本当にきつかった。国民年金については数ヶ月分未納のままだ。そんなもの払ってたらとても生活できなかったからだ。それがなんとか今の状態まで回復してきたのでお礼参りはするべきだと思われた。それでバイトはお休みをとって午前中家人とふたりで出かけた。融通稲荷では融通金をお返ししお礼もお納めした。新たな融通金も拝借した。いくつかのお稲荷様がまつられているので主だったものにお参りし境内のベンチに座ってペットボトルのお茶を飲んだ。その後おみくじを引こうという話になり私去年凶が出たんだよと言う家人を笑い飛ばしながら六角形の木製の筒を振って出てきた棒に書いてある番号の棚に入ってるおみくじを引いたらなんと凶。待ち人は来ないし失せ物は出ないしもう関係ないけど縁も遠ければ結婚もよくない。家を建てるのも転居も万(よろず)悪しとのことでもうこてんぱんなことが書いてある。いっそ小気味いいくらいでかえって厄落としができたみたいなさばさばした気分になった。家人もあまりいいことが書いてなかったそうで私たち何やってんだろうねとため息をつくけどまあ気の持ちようだよと慰めになるんだかなんないんだかわからないことを言って帰って来た。来年また十一月十日にお参りに行けるようだったらとてもうれしい。駅前のスーパーで適当なお弁当を買って帰り子供は大学なのでふたりで昼食。