指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

強行軍。

 弟から電話が来たのは居間にいた家人のスマホ宛てで隣の寝室で昼寝してた僕が弟からかかって来た電話に出なかったかららしい。もうすぐ午後三時半になるという頃だった。電話を切った家人が寝室のドアを開けて言うには僕の母親が救急車で運ばれてそのまま入院したということだった。新型コロナから来た肺炎らしい。それであわてて弟のスマホにかけ直すと自分も新型コロナにかかっていて家から出ることができず母親の入院に関する手続きをしに行けない。それをしにこちらに来てはもらえないだろうかという打診だった。実家は最近フラワーパークでちょっと有名になった栃木県足利市にあり入院先も市内にある赤十字病院だ。浅草から東武伊勢崎線の急行りょうもう号に乗れば東武足利市駅までは一時間ちょっとで行くことができる。夕方から塾もあるし明日もバイトがある。でも弟にしてみれば相当困った末の依頼だったろうし母親の入院となれば行かない訳には行かない。普段母親の面倒は全部弟に見てもらってるし。それで即決で行くことにして電話を切った。まずはできるだけ早く塾を休むことを生徒さんたちに知らせなければならないので一斉送信でその旨メールする。明日のバイトについてはもしかしたら行けるかも知れないので連絡しない。(この項続く。)