指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

強行軍その三。

 帰りの電車はひどく空いていた。途中駅でたくさん乗客があるんだろうと予想していたが乗ってくる人はほとんどいなかった。外はすっかり真っ暗になっていた。家人がおなかが空いたと言って行きに買っておいたサンドイッチを食べた。僕は豚まんのおかげかほとんど空腹を感じなかった。不安なのか心配なのか疲れているのかいないのかよくわからなかった。とにかく早く帰りたいと思っていた。浅草に着くとそのまま電車を乗り継いで帰った。どの電車も幸い座れてよかった。家人と結構話したと思うんだけど何を話したか覚えていない。駅前に着くとまだスーパーが開いてたので何か食べ物を買おうということになりお好み焼きを買った。帰宅後子供が待ってたので一通り事情を話した。お風呂を洗ってなかったことに気づくが面倒だったので洗わないままにしてシャワーを浴びた。それからお好み焼きと行きに買ったもうひとつのサンドイッチを家人と半分こにして食べた。かくして強行軍は幕を閉じた。今はそれから二日目の夜だ。夕方弟が病院に電話したらどうやら順調に回復してるということらしかった。家人が買ったパジャマがいたく気に入ったので同じものをもう一枚欲しいと言ってるそうだ。そういう気力があるところがいかにも母親らしい。強い人だから案外乗り切れるんじゃないかと思うよと家人に向かって帰りの電車で言ったのを今思い出した。家人にレシートの写真を撮ってもらいそれをラインで送った。商品番号みたいなのが記載されてるのでお店の人にそれを見せればどのパジャマかすぐにわかるかも知れない。今度の日曜日にそれらを持って弟が病院を訪れることになっている。面会できるかどうかわからない。でも日一日と回復に向かうことを祈っている。
 一昨日のスイムは三十分で八百。昨日は休んで今日は三十分弱で最低限の六百しか泳げなかった。強行軍の疲れが出たか。とにかく泳ぎ続ける。