指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

突き放す視線。

金原ひとみ著 「憂鬱たち」 主人公は精神科へ行きたい。でも彼女はそこへたどり着く前に、途中のどこかに必ず引っかかってしまう。収録されている七つの短編がそんな設定で共通している。彼女の世界観や想像力の働かせ方はなるほど時にとても極端で病的なも…

春、なのに。

吉田修一著 「春、バーニーズで」 最後の一編を除き、短編連作と言っていいと思う。「最後の息子」の続きということだ。「最後の息子」がどういう作品か忘れていたけど表題作「春、バーニーズで」を読んですぐに思い出した。あのゲイの話だ。 吉田さんの作品…

三日続けて。

金曜日の昼どきに家人とふたりで池袋へ行った。渋谷とか吉祥寺は昼食をとる店が大体決まっているが、池袋はそういう店が無い。以前はよくパルコにあるカレー屋に行っていたけど、ランチメニューが変わったり改装して店の居心地が変わったりして行くのをやめ…

深刻にならない結末。

中島京子著 「平成大家族」 知り合いが貸してくれたので読んだ。 一家族の構成員の誰もが、なんの問題も無く暮らしているということはあり得ないことに違いない。介護の問題、引きこもりの問題、失業と再就職の問題、進学やいじめの問題、不倫や離婚の問題。…

仏様の手のひら。

青山七恵著 「わたしの彼氏」 タイトルを読んでなんか主人公は「わたし」で、その「わたし」が語る「彼氏」の話のように思っていたけど、どう考えても主人公は「彼氏」であって「わたし」ではない。でなければもっと普遍的な「わたしの彼氏」を指していると…

見つかり過ぎ。

橋本治さんの短編集「つばめの来る日」を探し始めてもう何年か経つと思うけど、今週渋谷のブックオフでハードカバーを200円で見つけて喜んで買って来た。ところが今日最寄りのブックオフで同じ本の文庫版を105円で見つけた。随分長いこと探してるのに、なん…

また寝酒をやめている。あるいは、ブックオフの日々。

もう何度目かになるかわからないけどここ五日間ばかり寝酒をやめている。調子に乗って飲み過ぎて胃を壊したからだ。寝酒をやめるとすることが無いので結局本を読む。翌朝の二日酔いも気にしなくていいので深夜まで読む。家人の好きな「アメト- -ク」とか「怒…

取り返しがつかないこと。

高橋源一郎著 「「あの日」からぼくが考えている「正しさ」について」 昨年3月11日の震災から今年1月1日まで、高橋さんがツイッターにつぶやいたことと、折々に書かれた小説やエッセイや選評などを時に冒頭だけという形で収めた本。このブログのアンテナにも…