指栞(ゆびしおり)

前にも書いたかも知れないけど。

ADHDについて。

家人とは割と年が離れているので決して高齢出産ではなかったのだけど、何しろ難産だったしそれでなくとも親というのは子供に関して心配のタネが尽きるということがない。知る限り思いつく限りの病気を一度は子供に当てはめてみる。これはADHDの子を持つ親御さんへのインタビュー集で、読んで自分の子供はどうやらADHDでないらしいように思えた。そういう意味ではとても助けになった本だ。
でもそういう読み方は、少なくとも著者が意図しているこの本の役割から言えば間違っていることになる。おそらくこの本の目的はADHDについての正確な知識を伝えることだ。そしてそれによって、ADHDの子供を持つ親御さんに対処のための具体的な選択肢を知らせることだ。もっと先には医療機関教育機関の受け入れ態勢が変わってくれることも視野に入っているかも知れない。また広く読者に対してADHDに対する理解を求めることも意図のうちには含まれている気がする。
ただインタビュイーが全員母親であることにはちょっと驚かされる。いったい父親はどこへ行ってしまったのか。子供の面倒はすべて母親が見ているのだろうか。それで父親にはインタビューに答える用意がまったくないとでも言うのだろうか。母親たちは一様に追いつめられているように見える。それを第一に支えるべきなのは他ならぬ父親だと思うんだけど。せめて母親と一緒にインタビューを受ける構えが父親にはなかったのだろうか。
もちろんADHDも深刻な問題に違いない。でも思いがけずあぶり出された形の家族の機能不全も、同様に深刻な問題だという気がした。